チーフマネージャーの山崎です。

ユネスコの世界偉人暦に、ダンテ・シェイクスピア・リンカーンとともに、日本人初として選ばれたのは紫式部でした。英訳「The Tale of Genji」(源氏物語)の作者です。

イギリスでは、「レディムラサキは偉大な小説家の中で、フロイトよりももっと分析的で、プルーストと同じくらい優れたサイコロジスト(心理学者)である」と評価されています。

そんなシェークスピアやリンカーンに比肩する彼女の本名は紫式部ではありません。生前の実名(諱いみな)ははっきりとわかっていないのです。紫式部と名付けられたのは 、彼女の父の官位が式部大丞であっこと、主人公の名前が紫の上であったからそう名付けられているだけなのです。

なぜ同時代の紀貫之や、その前の時代に生きた山上憶良の名前は残っているのに、彼女の名前は残っていないのでしょう。

古来、名前は本人の魂の一部と考えられてきました。魂の一部である名前を呼ぶ事は霊的支配を受け、呪いの的を絞る座標ともなり生前に呼ぶことは「忌」とされていたのです。

この考え方は日本に限らず古代エジプト時代から東アジア文明圏にも見られます。
民俗学古典「黄金の枝」筆者ジェイムズフレイザーは、「古代において帝王の名前は究極の秘密とされた」と述べています。
最大の力を持つエジプトのファラオに呪いをかけられないように、実名は決して他に知られない様、生前のファラオは、「我が君」「王」等と呼ばれました。
日本では通称名で呼ばれました(時代は下りますが、桜吹雪の入墨で有名な遠山の金さんの実名は、遠山景元であり、通称名は金四郎、役職が左衛門尉と云えば分かりやすいでしょうか。遠山景元とは町衆も役人仲間も呼んでなかったですよね。)。

当人が死ねば、ファラオや紀貫之等の実名は口に出す事が出来るようになり、実名で記録されます。
生きている間に実名で呼ばれることはほとんどなかったのです。

まして紫式部は女性。家族以外実名を呼ばれる事はなく、女房として天皇の奥様や貴顕の方に仕えれば、その〇〇の女房と呼ばれます。(身の回りのお世話をすることから、現在の女房の語源となっています。)

男尊女卑の時代であり、世界最古の物語と云われ何巻にも及ぶ作品を書いても女性自身の実名で名を記す事はありませんでした。

それから千年余後、2016年アメリカ大統領選でドナルドトランプ氏に敗れたヒラリー・クリントン氏は、敗北宣言で次の様に語りました。
「私たちはいまだ、最も高く、硬いガラスの天井を破ることが出来ていません。でもいつか、誰かが成し遂げてくれるでしょう。私達が思うより早く、そんな日がきてほしい。」(朝日新聞より)

今月、実質的我が国の次期首相を決める自民党総裁選が行われました。候補者4名のうち2名が女性。2008年、現東京都知事の小池百合子氏が臨んだとき以来の女性候補者でした。
当選とはなりませんでしたが、以前は考えられないことです。
女性の社会的地位は向上しているのでしょうか。

いいえ、まだ道遥かです。
貧困、戦争、謂れなき慣習などに苦しんでいる名もなき女性は、今もいます。
そういった「障壁を負わされている女性たち」を可視化し、支え、共に闘えればと思うのです。

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